【入湯記】【別府】東町温泉

停車場にひっそり佇む、春の日うつす壁画の湯

✔ 別府・浜脇、駅すぐの鄙び系共同湯

✔ 別府の春が壁画で年中楽しめる

✔ 広い浴場に小さな湯船が可愛い

別府八湯のひとつ、浜脇温泉(はまわきおんせん)は、鉄輪(かんなわ)と並ぶ別府最古の温泉郷と言われ、室町初期に大友氏の初代・能直(よしなお)が豊前・豊後の守護職として入国し、朝見八幡神社を勧進した頃からその歴史をつないでいます。

浜から温泉が湧き出る様から「浜わき」と名付けられたこの地には、湯殿を備えた大友氏の別邸があり、キリシタン大名として知られる二十一代の義鎮(よししげ)が当主の座を得るきっかけとなった「二階崩れの変」の舞台にもなりました。

往時を偲ばせる遺物の多くは既に失われて久しいですが、明治44年(1911年)に現在の日豊本線に鉄道院が設けた「浜脇駅」は、百年を経た今も駅舎はそのままに、現在はJR東別府駅として、日々多くの乗降客に利用されています。

そんな歴史ある駅舎のそばに、ひっそりと浜脇の記憶を語り継ぐ、ひとつの湯小屋があります。

その名は「東町温泉」(ひがしまちおんせん)。地域の皆さんから、普段使いのお湯として長く愛され続ける共同浴場です。

訪れたのは夕方の6時半ごろ。4月も半ばを過ぎ、随分と日が高くなりました。

早い時間には無人の番台ですが、夕方になるといつものお母さんが笑顔で迎えてくれます。他愛ない世間話のあと、100円を預けて半地下の浴場へ向かいます。

緩やかな階段を降りきると、そこには広い洗い場に比べて、随分小さな小判型の湯舟と、壁一面を大きく切りとる一枚の絵が姿を現しました。

「重なるまちのきおく」と題されたこちらの壁画は、2016年に芸術振興を目的に活動するNPO法人「BEPPU PROJECT」(ベッププロジェクト)と、東町温泉組合、そして地域住民の協働で企画され、数回のワークショップを経て、大分にゆかりのイラストレーター・網中いづるさんによって制作されたものです。

以来、東町の湯に親しむ人たちに、別府ん人(ひとと書いて”し”と読ませる。大分弁)の原風景である高崎山と別府湾の「春」を一年を通して楽しませてくれているのです。

階段を降りきった辺り、脱衣場の側には数本の桜。その姿は、春になると薄桃色に染まる東別府駅を連想させます。

そして、脱衣箱の上には猫。街の至るところで彼らを見かける、別府ならではのモチーフです。

湯船から壁画を見上げた時、今年の春がゆっくり桜を眺める時間もないまま、慌ただしく過ぎていったことを、ふと思い出しました。

かつてこの地で栄華を誇った大友氏。彼らが歴史の表舞台から静かに姿を消した様に、人も時間も桜の花も、そして浜脇の街の姿も、ひとところに留まる事なくその姿を変え、ただ湯のように流れゆきます。

東町の壁画は、その「流れゆくもの」の美しさをとどめ、次代に浜脇の記憶を継いでいく「タイムカプセル」のようなもの、なのかもしれません。

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訪問日:2018年4月19日

東町温泉(ひがしまちおんせん)

住所:別府市浜脇1-16-1

電話:0977-21-1267

立寄料金:小学生以上 100円

営業時間:6:00~22:30

定休日:不定休

泉質:単純泉

アメニティ:なし

駐車場:あり(2台)

※記事中の情報は公開日時点のものです

 

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