【入湯記】【別府】紙屋温泉

高崎山に見守られ、路地裏の情緒を宿す、百年湯

✔ 別府・路地裏の情緒漂う共同浴場

✔ 飲泉・足湯も楽しめる

✔ 男湯の壁画は雄大な高崎山の姿

別府市千代町。市営永石温泉(なげしおんせん)から道路を挟んで少し入ったあたりに、「路地裏の情緒」の看板を掲げる一軒の共同浴場があります。

「紙屋温泉」(かみやおんせん)は、その名を周辺に多く集まっていた紙商に由来し、明治の始め頃に創業したという老舗の共同浴場。「路地裏の情緒」という素敵なキャッチフレーズは、正面の空き地(現在は病院の駐車場として使用されている)に建っていた長屋に隠れ、まさに路地裏の只中にあったことから付けられたそうです。

今はすっかりお天道さまに晒されて、明るい日の指す紙屋温泉にも、そんな頃があったんですね。

ちなみに、紙屋温泉には別府の共同浴場でも珍しい、保健所許可済の「飲み湯」が用意されており、風呂上がりに手持ちの容器にくべて帰るご近所さんも多くいらっしゃいます。

その昔は、その薬効が遠く大阪にまで聞こえ、汽船で運ばれる程であった紙屋の飲み湯。筆者もひとくち頂きましたが、薄っすらと渋みを感じる程度のクセのない口当たりが印象的でした。

泉質の効果として、痛風や糖尿病、慢性的な消化器病の改善が期待でき、足湯まで備えるこちらの飲泉。お越しの際には、用量を守ってぜひお楽しみ下さい。

※以下、画像は他日撮影したものを掲載しています

筆者が紙屋を訪れたのは、すっかり日も高くなった夕方の5時半過ぎ。ちょうどお客さんも増え出す頃です。暖簾の向こうから、ザァザァと湯を掛け流す音が聞こえてきました。

番台さんに100円を預け、脱衣場で湯上がりの立ち寄りさんへのご挨拶を済ませたら、いよいよ本日のお湯、そして「壁画」とのご対面です。

軽いサッシを開き、段をひとつ下がった浴場は、女湯と吹き抜けで繋がった天井の高い造り。中央には四角い湯船が満々と湯を湛え、利用者さんに紙屋の湯を供していました。

そして、男女の浴場を分かつ高い壁には、蒼く、ひたすら蒼い高崎山の姿。

この高崎山の壁画は、以前紹介した「東町温泉」と同じく、「まちのお風呂を地域の宝に!みんなでつくる、みんなのお風呂」と題し、芸術振興を目的に活動するNPO法人「BEPPU PROJECT」(ベッププロジェクト)と、紙屋温泉組合、そして地域住民の協働で企画され、数回のワークショップを経て2017年に設置されたものです。

こちらの壁画を手がけたのは、御年99歳の現役画家、松尾常巳(まつおつねみ)さん。

福岡県の柳川に生まれ、戦前から看板絵師として活躍されていた松尾さんは、中国や南方での戦争体験を経て、戦後に別府へ移り住んだ後、映画館の看板絵師として長く活躍された経歴を持ち、72歳で引退された後に、20年近く紙屋温泉の番台をお勤めになったという、まさに「紙屋温泉の生き字引」と言っても過言ではない方です。

その松尾さんが描いた高崎山に見守られながら、ゆっくりとお風呂を楽しむことが出来るのが、百年を経てなお訪れる人の絶えない紙屋温泉の新しい魅力なのです。

そんな壁画とともに楽しむ湯は、地下300mから組み上がる「炭酸水素塩泉」。別府らしい熱量で満たされた湯船へ身体を預けると、玄関の飲み湯と同様、素直で穏やかな湯心地を感じます。

じんわりと動かず、しばし。肩までゆっくり浸かりながら、湯船から見上げる高崎山の姿は、父性とも優しさとも言えるものを感じさせ、一日の終わりに、何とも心安らぐひとときを与えてくれました。

鶴見などの別府の山々に降る雨が、伽藍の熱に育まれ、温泉として人々の前に再び現れるには、およそ半世紀を要すると言われています。

「温泉の出湯変わらず人変わり」

そろそろ二巡目のお湯を迎えようとする松尾さんが、壁画に添えた句に込めた思いは、これからも紙屋の湯とともに、絶えることなく次代へ受け継がれていくことでしょう。

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訪問日:2018年6月13日

紙屋温泉(かみやおんせん)

住所:別府市千代町11-27

電話:0977-24-3028

立寄料金:100円(貸し切り湯 1,000円)

営業時間:13:00~23:00(11:30~12:30までは貸し切り湯)

定休日:不定休

泉質:炭酸水素塩泉

アメニティ:なし

駐車場:あり

※記事中の情報は公開日時点のものです

 

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