【入湯記】【別府】明礬温泉 豊前屋旅館

震災の苦難を超えて、再びまみえる硫黄の湯

✔ 熊本地震で建て替えられた老舗宿

✔ 男女内湯は利用者の共用で提供

✔ 泉質は弱酸性の単純硫黄泉

✔ 九州・別府八湯両温泉道対象施設

2016年4月に発生した熊本・大分地震が、熊本の各地方に甚大な被害を与えたことは、まだ記憶に新しいところですが、この地震が湯の街・別府にも大きな爪痕を残していたことを知る人はそう多くありません。

観測史上最大の震度6弱を記録した別府市においては、風評被害による観光客の激減という経済的な側面に留まらず、大正期から百年近い歴史を繋いできた別府元町の「梅園温泉」(うめぞのおんせん)が、湯小屋の傾きにより閉湯を余儀なくされたり、資金面の問題から耐震工事が行えない老舗のホテルが、県外の資本に営業権を売却したりと、歴史ある共同浴場や宿にも、暗く大きな影を落としていたのです。

その中でも、明礬温泉(みょうばんおんせん)に所在する「豊前屋旅館」(ぶぜんやりょかん)の休業は、筆者を含め、こちらの湯を良く知る温泉好きにとって衝撃的なニュースとして伝わりました。

地震により自宅兼旅館の建屋に大きな被害が発生し、直後から営業を休止した豊前屋については、多くのファンがその動向に注目していましたが、程なく建て替えによる再開の報が流れると、一様に安堵の声が流れたのをよく覚えています。

画像は、建て替え前の豊前屋旅館と男性内湯を写したもの。落ち着きのある母屋と、良質な硫黄泉を提供する内湯は、県の内外に多くの温泉好きを惹きつけてやまない魅力を湛えていました。

それから、1年9か月の休業期間を経て、今年1月に再開された「豊前屋旅館」ですが、新築成った後も、優しいお湯はそのままと聞き及び、今回お邪魔することにしたのです。

九州州横断道路から国道500号線を湯山方面へ。明礬の大きく右へ曲がるカーブを道なりに進まず、真っすぐ「湯屋えびす」の第二駐車場を過ぎ、細い道を少し上った辺りに、真新しい建屋が姿を現しました。

大きな看板には「豊前屋旅館」の文字。確かにここが新しい豊前屋のようです。

以前の面影はどこにも見えず、シックな黒壁の平屋造りへと姿を変えた建屋の趣に、正直戸惑いを感じる筆者ではありましたが、とにかく中へ入ってみることにしました。

開け放たれた引き戸から、涼やかな風を館内へ迎え入れる玄関は、午後の早い時間であったことから、音もなくひっそりと静まり返っていました。季節の花が飾られたロビーには、真新しい木の香りが漂い、改めてここが新築であることを思い出させます。

ごめんくださいと呼ばわると、フロントすぐ奥の調理場から、宿の女将さんが笑顔で現れました。

入浴料の500円を手渡すと「もうお風呂はご存知ですよね?」と女将さん。特に意識することなく、ケロリン桶を携えて現れた筆者を相応の温泉好きと見ただけ、と察するのですが、筆者にとってはその一言がなんとも懐かしく、嬉しい瞬間でもありました。

というのも、こちらのお宿、男女別に用意された小さな内湯を、他の利用者と共有することになるため、露天や貸し切りを期待して訪れる人には予め断りを入れるというのが、建て替え前からのスタイル。新しい宿に生まれ変わっても、お風呂が昔のまま続けられていたことを喜びつつ、大丈夫です、とお返ししたのは言うまでもありません。

男女の浴場は、玄関ロビーから真っすぐ伸びた廊下の奥。女将さんから先客がいることは伝えられていましたので、ご迷惑にならないようご一緒させて頂きましょう。

作り付けの脱衣箱が供えられた脱衣場は、簡単な洗面を備えたシンプルな設え。ドライヤーは部屋に準備されているためか、洗面には見当たりませんでした。着衣を解き、筆者も浴場へ向かいます。(画像は利用者さんにお断りの上撮影させて頂きました)

浴場へ続くサッシを開くと、そこには微かな硫黄の香りとともに、どこか懐かしい風景が広がっていました。

窓越しに眺める明礬の景色、細い湯口から注がれる湯、そして、満々と白濁した湯を湛える木枠の湯舟。全体の意匠こそ異なるものの、そこにあったのは確かに「僕らの良く知る豊前屋のお風呂」だったのです。

新しいお風呂に、どことなく既視感を覚えつつ、かけ湯の後に湯舟へ身体を差し込むと、やはりそこには豊前屋の湯。以前と変わらぬ優しいお湯が筆者を迎えてくれました。

泉質は、硫化水素型の「単純硫黄泉」。低い温度で保たれる白い湯は、いつまでも浸かっていられそうな湯心地を与えてくれます。肌触りは気持ち硬め、これも弱酸性に振ったお湯ならではの楽しさと言えるでしょう。

しばらくして、先客が挨拶とともに上がられた後、光差す白い湯舟には筆者だけが残されました。

薄っすら汗をかいては上がり、火照った身体を冷ましてはまた浸かる、を繰り返すうち、不思議と昔浸かった豊前屋のお風呂を思い出し、ひとりお湯との再会を楽しみました。

再び歩みを始めた豊前屋旅館と、たゆまず湧き続ける硫黄の湯。その行く末に幸多からんことを祈る梅雨晴れの午後は、ゆらり溢れる湯とともに、ゆっくりと流れていったのです。

※豊前屋旅館は「九州温泉道」そして「別府八湯温泉道」両方の参加施設です。泉人・温泉名人を目指す皆さまは、お帰りの際にスタンプをお忘れないようお願いします。

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訪問日:2018年6月17日

明礬温泉 豊前屋旅館(みょうばんおんせん ぶぜんやりょかん)

住所:別府市明礬2組

電話:0977-66-0537

立寄料金:500円

営業時間:11:00~16:00(要問い合わせ)

定休日:不定休

泉質:単純硫黄泉

アメニティ:あり(ドライヤーなし)

駐車場:あり

※記事中の情報は公開日時点のものです

 

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