【入湯記】【大分】長湯温泉 郷の湯旅館

温泉通も太鼓判。鮮度抜群の濃厚炭酸水素塩泉が楽しめる長湯の名湯

✔ 鮮度・濃度とも抜群の炭酸水素塩泉

✔ 比較的高めの泉温が楽しめる

✔ 厚い析出物で覆われた湯舟は必見

✔ 湯小屋内は写真撮影一切禁止

✔ 九州温泉道対象施設。湯印帳持参で

最初にお断りしておきますと、今回の記事に浴場の画像はありません。

今回ご紹介する「長湯温泉 郷の湯旅館」(ながゆおんせん さとのゆりょかん)は、湯守のご主人曰く「浴場の撮影は一切お断りしている」とのことで、施設の画像も許可を得た母屋と湯小屋の外観に限っての掲載となります。

筆者のつたない筆で、こちらのお風呂の素晴らしさがどこまで伝わるか甚だ疑問ではありますが、長湯における名湯の一つを避けて通る訳には参りません。改めて、郷の湯旅館と湯守のご主人に敬意を表しつつ、今回のご紹介に移りたいと思います。

「郷の湯旅館」は、長湯温泉の中心街から車で5分程、豊後街道に沿って長湯地域の最上流に所在する静かな一軒宿で、その上質な湯に癒しを求め、多くの利用者が訪れることで知られています。また、九州温泉道の参加施設にその名を連ね、評判を聞きつけた県内外の温泉愛好家からも多くの支持を集める一湯です。

訪れたのは梅雨空の午後。駐車場には筆者以外の車が一台あるばかりで、この日は郷の湯も随分ひっそりとしています。

駐車場から敷地内に流れる川を超え、少し離れた場所にある母屋へ向かう途中、橋のたもとに奇妙な光景を見つけました。

湯小屋から川へ張り出すように盛り上がり、温泉藻(おんせんそう)の緑と印象的なコントラストを形成する黄色い土塊。これこそ、郷の湯旅館が誇る湯の名残り。長湯のことばで「湯とうじ」と呼ばれる析出物の塊です。

道路側にはみ出した湯とうじをひとかけ拾い上げると、つまんだ先からぽろぽろと崩れ、それらがまだ新しいものであることを教えてくれました。

元は岩場の川岸が一面の浅黄色に染まるこの迫力。そしてこの景色を形作る湯の濃厚さに、入浴の前から自然と期待は高まります。

※筆者注 温泉地によく見られるこの「温泉藻」は、高温の環境を好む特殊な藻類で、それ自体は人体に有害なものではありません。

湯小屋の正面に離れて建つのが、郷の湯旅館の母屋です。ごめんください、と、立派な構えの玄関で呼ばわると、湯守である宿のご主人が現れました。

料金をお支払いする筆者に「お客さん、うちには初めて来たの?」とご主人。念願かなってようやく訪れることが出来たと告げると、「うちの湯は濃厚だよ、楽しんでいってな」と、九州温泉道のスタンプを押しながら、人懐っこい笑顔で返してくれました。

ありがとうございます。では、遠慮なく、郷の湯のお風呂を楽しませて頂きます。

先程の湯とうじを尻尾に見立てた頭の部分に、湯屋の入口がありました。

「霊黄泉」(れいこうせん)と名付けられたこちらの内湯。長湯の代表的な泉質である炭酸水素塩泉の「黄」色、復活を意味する「甦り」から「黄泉」、人智を超えた湯の恵みを表す「霊泉」のトリプルミーニングと推測されますが、長湯が長らく湯治場として栄えてきたという歴史を鑑みると、その名に込められた湯守の深慮を感じずにはいられません。

掲示の分析表(平成22年)には、地下200mから毎分127Lの源泉が自噴(!)とあり、いかに郷の湯の源泉が豊かであるかが分かります。また、湧出時の泉温が51℃と、ぬるめで湧く長湯の中では比較的高い温度を保つこともこちらの湯の特徴と言えるでしょう。

泉質は「マグネシウム・ナトリウムー炭酸水素塩泉」。しかも、成分総計が5,573mgと相当に濃厚。療養泉として認められる基準値(1L中に1g)の5倍を含むとあれば、一時に長く浸かりすぎないなど、入浴にも相応の注意が必要です。

そして、その半量を占めるのが陰イオン中の「炭酸水素イオン」、且つpH8.5を示すとなれば、アルカリ性の療養泉として、皮膚病や火傷を含む外傷の治癒、美肌効果や新陳代謝の促進など、肌への効果が期待出来るでしょう。

知識として、成分の濃さと期待される効果に比例関係がないことは知りつつも、この分析表を見てしまうと、期待値が高くなるのは仕方のないことですよね(苦笑)

※ここからは、文章でのご紹介になります。浴場の画像をご覧になりたい方は「郷の湯旅館公式ホームページ」を御覧ください。(クリックでサイトにリンクします)

「霊黄泉」の男湯入り口は、湯小屋入り口から通路を真っ直ぐ進んだ突き当りにありました。

暖簾をくぐった先には脱衣場。壁面を杉板で覆った脱衣場は美しく保たれており、脱衣箱の他に畳が敷かれた小上がり風の腰掛けも用意されていました。年配の方や湯治のお客さんへの配慮と思われますが、こういった設備がちゃんと用意されているのは有り難い限りです。

着衣を解き、いよいよ浴場へ足を踏み入れます。

全面板張りの男性浴場は、目測で幅が7~8m、奥行き4~5m程の広さ。高い天井には太い梁が通されており、脱衣場の出入口からは、一段下がった浴場に向け、桟橋を思わせる木製のステップが連なっています。

ステップを降りきったその先には、右の壁面に沿って一基のシャワーカラン、正面には採光のための大きな窓が開かれ、薄暗い湯屋の中央に横たわる、小判型の「湯船らしきもの」をゆらゆらと照らしていました。

浴場の中心にあり、一際大きい楕円形のそれ、その形状から「過去に岩風呂であったろう湯船」は、ぶ厚い析出物に覆われて、既に造られた当時の姿を失っていました。

剥きたての桃を連想させる、黄味がかった肌色は、幾重にも、また幾重にも湯船を覆い、溢れる湯の流れに任せて、美しい流線型を構成しています。もちろん、その流れが湯船で留まることはなく、洗い場をも同色に染めながら湯小屋の全てを侵食し、どこまでが人の手によるものか、それとも自然の為せる業なのか、その境界線を曖昧にしていたのです。

その「湯船らしきもの」に注がれる郷の湯の霊泉は、午後の光を浴びながら翡翠の色を湛えつつ、常に自身を新しくしていました。ふと湯口に目をやると、浴槽に直接注がれる湯は半量程度。もう半分は樋を使って湯船を避けるよう、洗い場に捨てられています。

全量を湯船に注ぐと、あの橋のたもとで見た黄色い土塊のように、程なく湯船を湯とうじで埋め尽くしてしまうのだろう…そんな湯舟の在り様に、崇敬の対象でありながら同時に荒ぶる神でもある霊泉と、湯守のあくなき戦いを見るような気がして、その日々のご苦労を思わずにはいられません。

シャワーで身体を流し、いざ湯舟へ。

この瞬間にも、自身の厚みを増しゆく湯舟のふちを超え、翡翠の中へ静かに足を差し入れると、分析表に掲示の通り、少し熱めの湯が筆者を迎え入れてくれました。熱と湯の強さに身体を慣らすため、とりあえず半身のみ湯舟に預けます。

下げた視線の先、湯の表面に見えたのは、薄っすらと集まる成分の油膜。既に幾人もの利用者を迎えた湯舟でこの状態なら、オープン直後にはどの様な景色が広がっているのか…。次回は是非、オープン直後の湯舟を見てみたいものです。

湯舟の底には、ざらりとした感触。注がれる湯が作ったか、それとも縁から削り落ちたか、湯の花と呼ぶには濃厚に過ぎる析出物の粒が広がっていました。指先ですり潰すと、湯舟の翡翠と混じりあいながら、元あった場所へ静かに還っていくそれらも、この風呂ならの愉しみと言えるでしょう。

慣れた頃合いを見計らい、湯舟にゆっくり肩まで身を沈めながら、改めて湯を全身を馴染ませると、アルカリを示す泉質は肌に適度な滑らかさを与えながら、少しづつその強さを伝え始めます。

湯舟の只中で、その感触を確かめることしばし。上がっては浸かる、を幾度か繰り返すうち、成分の濃さがもたらす比熱の高さを得て、半身の時よりもぐっと迫力を増す湯に魅せられる筆者がそこにいました。

額に汗を浮かべつつ、長湯の誇る名湯と向き合い、その強さに抗わんとする時間が筆者にとって、特別な体験となったことは言うまでもありません。

この湯に集う人全てに、特別な体験を与えてくれる郷の湯の「霊黄泉」。その強き湯を畏れ、治め、共にある湯守への感謝をこころに、あと少しだけ、お湯との語らいを楽しみたいと思います。

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訪問日:2018年7月1日

長湯温泉 郷の湯旅館(ながゆおんせん さとのゆりょかん)

住所:大分県竹田市直入町大字長湯3538-2

電話:0974-75-2912

立寄料金:大人・子供 500円

営業時間:10:00~17:00(16時受付終了)

定休日:不定休

泉質:マグネシウム・ナトリウムー炭酸水素塩泉

アメニティ:あり

駐車場:あり

※記事中の情報は公開日時点のものです

 

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