【入湯記】【大分】西谷温泉

景勝地・耶馬渓の山懐に抱かれた、湯心地とろりの安らぎ温泉

✔ 名勝・耶馬渓近くの山間の湯

✔ 食事処やコテージを備え、宿泊も可

✔ 泉質は湯ざわりとろりのアルカリ泉

✔ 八角形の大浴場から山里を一望

明治から昭和期の文壇で活躍し、文藝春秋社を興したことでも知られる文筆家・菊池寛(きくちかん)が、大分県中津市の奇勝・耶馬渓(やばけい)に残る「青の洞門」(あおのどうもん)を舞台にした小説「恩讐の彼方に」(おんしゅうのかなたに)を発表したのは、大正9年(1920年)のことでした。

旧主を殺めて出奔した主人公・市九郎(いちくろう)。自らの行いを悔いた市九郎は出家し、減罪のために全国行脚の旅に出ます。その旅の途中に訪れた豊前山国川(やまくにがわ)沿いの断崖で、馬子が足を滑らせて転落するのを見た市九郎は、街道を通る人々を救うため、この難所を掘り遂げる誓いを立てます。十数年の歳月をかけ、石工たちの加勢も得ながら、貫通にあと少しのところまで至った洞門と市九郎。その前に、仇討ちを誓う旧主の実子・実之助が現れて…。

というのが、物語のあらすじ。作中に登場するのはもちろん架空の人物達ですが、その舞台である「青の洞門」は、江戸の後期、市九郎のモデルとなった羅漢寺の僧・禅海和尚(ぜんかいおしょう)が、約二十年の歳月を掛けて手掘りした実在する隧道(トンネル)です。

洞門だけでなく、その舞台となった巨大な岩山「競秀峰」(きょうしゅうほう)や、古くより羅漢山中腹の洞穴に安置された五百羅漢像が厚い信仰を集める「羅漢寺」(らかんじ)等、現在も各地に点在する奇勝や景観を目当てに訪れる人々を楽しませる耶馬渓ですが、そこに良質の湯を供する温泉施設があることは意外と知られていません。

今回は、中津市の本耶馬渓町から「西谷温泉」(にしたにおんせん)をご紹介します。

「青の洞門」から国道500号線を車で15分程。辻々の案内板を頼りに山間の道をしばらく走ると、小高い山の中腹に「西谷温泉」が姿を現します。

集落の名をそのまま冠したこちらの施設は、地元産品の販売所や食事処・家族湯を備えた温泉棟の他、宿泊施設として全8棟のログハウス(茅葺きの宿泊小屋は火災の為に利用出来なくなりました)や、畳敷きの研修施設、お子さんに人気のローラースライダー(滑り台)と、ピザ窯まで備えたバーベキュー広場「食の広場」等、広大な敷地に様々なアクティビティを揃えた、耶馬渓を代表する複合施設として、季節を問わず多くの利用者を集めています。

筆者が訪れたのは、すっかり暑さも落ち着いた夕方のことでした。夏休みの期間中ではありましたが、平日ということもあり、冷房の効いた館内は随分静かな様子。

玄関に下足を預け、販売所向いのフロントで立ち寄りの旨を告げると、受付さんが大浴場は通路の奥です、と笑顔で案内してくれました。

受付さんにお礼を述べ、真っ直ぐ進んだ廊下の突き当りが脱衣所。引き戸を開くと、エアコン完備の脱衣所は涼やかに新しい客を迎えてくれました。(脱衣所の写真は利用者の了承を得て撮影しています)

光差す明るい脱衣所はコンパクトながら、お手洗いと洗面台を備えた造り。浴場の広さを考えると、脱衣カゴの数も必要十分でしょう。ちなみに、貴重品の類は、脱衣所前の通路に100円ロッカーが用意されていますので、そちらの利用をお勧めします。

着衣を解き、浴場へ繋がるガラス戸を開くと、丁度上がろうとされている家族連れと入れ違いになりました。軽くご挨拶して、足を踏み入れた筆者を待ち受けていたのは、ちょっと風変わりな造りの風呂場でした。

入口すぐ横の壁面に洗い場を配し、正面に大きな展望窓を擁する浴場は、ぐるり見回すと八角形の造りとなっており、山側を背にして谷に開けた三面を窓とする扇型の湯船には、八面を支える中央の柱に備えられた湯口から、クリアな湯が滔々と掛け流されていました。

シャワーカランを備えた洗い場もご覧の通り。八角形の壁面に沿って用意されるために数こそ多くないものの、隣との間隔は十分で使い易い造りになっています。

なお、洗面器と風呂いすは湯口の側にまとめて置かれており、利用者が都度洗い場に持ち込むスタイルです。利用時には整理整頓を心がけての利用をお願いします。

シャワーカランで一日の汗をしっかり流し終え、ゆっくり湯船へ身体を差し込むと、ただただ滑らかな湯が筆者を包み込みました。

泉質は弱アルカリ性の単純温泉(公式ホームページの情報による)。敷地内の泉源から使用位置に近い温度で掛け流される透明な湯は、心地よい肌触りで利用者を楽しませてくれます。

分析表の掲示が確認出来なかったため、詳しいところは分かりかねますが、耶馬渓周辺の地質が火山活動に由来することを考えると、このトロリとした湯がモール質を示さないことも十分に理解出来ます。

そして、特筆すべきは大きく切り取られた窓から眺める、この山里の景色でしょう。一段高い山の中腹から、西谷の集落を一望するこの風景は、露天でこそ無いものの、それに近しい開放感を与えてくれました。

眼下には、青々と高さを競う水田の稲。まだ日の高い空には、山向うから立ち昇る雲。湯船で独り、滑らかな湯心地に浸りながら夏の盛りを確かめる時間は、筆者にとって何とも心緩むひとときとなりました。

耶馬渓にお越しの際には、名勝・奇勝の他に、ぜひ「西谷温泉」を訪れてみて下さい。四季折々で移ろう山村の景色を、日々変わることなく流れる清らな湯とともに楽しむ…そんな美しい時間が貴方を楽しませてくれる筈ですよ。

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訪問日:2018年8月9日

西谷温泉(にしたにおんせん)

住所:大分県中津市本耶馬渓町西谷1448

電話:0979-53-2100

 

立寄料金

大浴場:大人 400円 / 小人 200円(満12歳未満)

家族風呂:1,800円(60分・要予約・最終受付 19:30)

 

営業時間:10:00~21:00(最終受付 20:30)

定休日:第3水曜(8月を除く)

泉質:単純温泉

アメニティ:あり(ドライヤーあり)

駐車場:あり

※記事中の情報は公開日時点のものです

 

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